気絶投資は失敗のもと

全ての記事

「投資成績良かった人の属性、1位亡くなった人」

投資界隈で定期的に話題に上がるこの文章は
積極的に売買するよりバイ&ホールドで長期運用する方が
最終的に一番儲かることを端的に教えてくれます

シンプルで短い話なのに示唆に富んでいて面白い内容ですし
このエピソードを参考にして積み立て設定後は一切残高を確認しないという
いわゆる気絶投資法を推奨する人すらいます

しかしこれは現実的に考えて余り賢い方法とはいえません

理由は以下の三つ

・そもそもそんなデータはない
・少額で一喜一憂すべき
・人生計画が
全く出来ない

順番に解説していきます

そもそもそんなデータはない

まず大前提を壊すようですがこのエピソードの根拠は分かっていません

一応投資運用会社CEOへのインタビューが発信源ではないかと言われていますが
そこでは「死んだ人ではなく口座の存在を忘れていた人だ」と言っています

※該当箇所は記事中段(英文)
https://www.businessinsider.com/forgetful-investors-performed-best-2014-9

どのみち下手に触るよりもバイ&ホールドの方が強いという内容ではありますが
少なくとも元の話から乖離してより面白おかしく脚色されていることが分かります

これに限らず世の中には投資の名著解説などでも
元となった研究の一部だけ抜き出したり改変を重ねることで
本来の趣旨とは違う内容になっているものも良く見かけます

大切な資産を守るための投資判断の基準を考える際には
誰かに改変された可能性のある内容ではなくきちんと元データを探すことは必要です

とはいえこの理由だけでは元のインタビューより話を盛っているとはいえ
大筋の所では変わっていないので気絶投資法自体に問題はないと思われるかもしれません

確かに暴落による狼狽売りや手数料のかかるアクティブな取引をしないという方針は
投資の鉄則であり基本通りと言えるでしょう

しかし仮に根拠が正しかったとしても
やはりお勧めできない投資方法であることには変わりありません

その理由が次の項目です

少額で一喜一憂すべき

一瞬「すべきではない」じゃないの?と疑問に思うかもしれませんが
タイトルの通り初心者は少額投資で一喜一憂すべきだと思います

もし気絶投資法で株価をチェックせずひたすら積み上げていれば
狼狽売りをすることもなく十年~数十年後にはかなりの金額になっているでしょう

しかし投資というのは増やせば終わりではありません
資産を増やした後その利益を確定し使ってこそ意味があります

気絶投資法では経験値が一切貯まっていない状態で
いきなり数百万~数千万の資産の売却判断をしなければならなくなります

投資経験者でも難しい出口戦略を積み立て期間が長いだけの人が行えるとはとても思えません

さらにそれぐらいの投資額になってくると一日二日で数十万円の値動きも日常茶飯事です

投資歴実質0年の赤ちゃん投資家にその値動きの中で売買計画を考えさせるのは
余りにもハードルが高すぎるのではないでしょうか

だからと言って決して定期的に売買をするべきだと言いたいわけではありません

ただ気絶して値動きを見ないようにするのではなく
まだ投資額が少ない時期からきちんと自分の資産の増減を確認して
少しずつ動じないメンタルも育てていくべきだと思います

投資初期の資産増減で一喜一憂するのは嫌だという人もいますが
そんな少額の変動にすら耐えられないのであれば
当然未来の自分がもっと大きな増減を耐えられるわけがありません

ただただ資産を増やすマネーゲームであればともかく
自分が使うために運用する以上いつかは売却判断が必要となります

その日になってから右往左往しないためにも
定期的な資産額のチェックは欠かすことのできない精神修行だと思いましょう

人生計画が全く出来ない

上の二点に加えて気絶投資法が現実的でない理由は
自分の資産額を知らなければお金に関する人生計画が全くできないことです

少額であれば忘れたままで人生計画建てても問題はないでしょうが
投資期間が長ければ元本が五十万程度でも数百万円以上になる可能性も十分あります

そんな大金を計算に入れず老後やその他ライフイベントの計画を建てると
本来不要なはずの過剰貯蓄をする羽目になるでしょう

極端な話、数千万の資産があるのにそれを知らず無理して働き続けるなんてことになれば
余りにも人生がもったいないと思ってしまいます

逆に漠然と予想していた価格より実際の資産額がはるかに少ない場合も
その後の人生計画に大きな変更を余儀なくされることでしょう

資産額と人生計画は切っても切れない関係である為
必要になるまでチェックしないという手法はやはり非現実的かつ非効率的と言えます

まとめ

巷でよく聞く「投資で一番の成功者=亡くなった人」という話ですが
根拠的にも現実問題でもあまり参考にならないというのが私の結論です

確かに「下手に弄らず買い続けろ」というメッセージ自体は共感できますが
だからといって無知であることを推奨することは出来ません

高額な年俸を得ているNBAの選手の引退後破産率が非常に高いという話もありますが
大金があってもそれを適切に扱うスキルがないとあっという間に失ってしまいます

相場の変動は精神的にストレスになることもありますし
本当に下落相場に耐えられない時の緊急退避としては
一時的に情報チェックから離れる選択肢はむしろ大賛成です

しかし最終的なゴールを考えると最低でも年に数回程度は
自分の資産状況の確認をした方がよいかもしれません

コメント

タイトルとURLをコピーしました