今回は長く投資をすると何度も考えることになる現金比率についてお話しします
現金比率(現預金比率)とは資産のうち現預金として持っている割合をさします
全資産1000万円で貯金500万円、株式500万円であれば現金比率50%というわけです
もちろん人によって人生設計やリスク許容度が大きく異なるため
全員に当てはまる答えはありませんが
よく聞く一般的な目安として年齢と同じ%分、現金として持つという基準があります
30歳であれば現金:投資が30%:70%のバランスになるように持つという事ですね
これは非常に分かりやすく特に新社会人の方など
資産形成初期に使う目安としてはかなり良い指標だと思います
最低限の生活防衛資金を貯めた後は、
この比率に応じて貯金と投資を行っていけば貯金のみに頼るより
はるかに資産形成のスピードは上がるでしょう
しかしある程度資産形成を続けていくと
この目安を使い続けることが実は難しくなります
銀行預金に預けているお金はほとんど利子がないため何十年経ってもあまり金額は変わりません
それに対して投資に回しているお金は日々上下するため短期的に見てもかなり価値が変わっていきます
さらに十数年もすれば当初の投資資金は現実的な範囲でも倍くらいに膨れています
そのため資産のバランスを保つためにはリバランスを行い
定期的に投資商品を売却もしくは買い増しして調整する必要があります
もちろん自分のリスク許容度を超えていたり
ライフプラン上、現金が必要になる場面では迷いなく売却して現金に換えるべきですが
そのような状況でもないのに比率を守るためだけに投資商品を売るのは
もったいないと感じてしまいます
さらに現金比率が急に変わるのは基本的に市場の相場が上下どちらかに大きく動いたときです
例えば現金の比率が上がるという事は株などが暴落しているタイミングなので
買い増しすることで株を安く仕入れることができるという発想の方もいます
これは一見合理的に見えますが意外な落とし穴が二つあります
一つは欲をかいてリスク許容度を超えてしまう可能性です
そもそも下がったタイミングで買うという行為は非常にストレスがかかります
リバランスが必要なほど現金比率が大きく変わるということは
ほぼ確実に暴落時に購入することになるため
運よく底値で買ってその後上がってくれればいいですが
買ったタイミングよりさらに下がってしまうと
投資を継続する意思を持ち続けることが困難になります
また暴落の程度によっては比率を維持するために追加購入する際
生活防衛資金にまで影響を及ぼしてしまう可能性があるため
余裕資金でやっているときとはリスクが大きく異なることになり、やはり推奨できません
では現金比率を高めに設定して
生活防衛資金とは別に、それなりの預貯金を普段から用意しておけばいいのでしょうか?
これなら確かに暴落時にも生活防衛資金に手を出さずに
安くなった株を買うことができます
しかしその場合二つ目の落とし穴である機会損失をしてしまいます
投資の名著である『敗者のゲーム』の有名なフレーズに
【稲妻の輝く瞬間に市場に居合わせなければいけない】というものがあります
余りにも有名なため知っている人も多いと思いますが
ものすごく簡単に説明すると
市場リターンの大部分は全体の期間のうちわずか数パーセントの期間に発生するものであり
下手にタイミングを探るより投資を長く続ける方が利益になる
ということです
つまり暴落時の買い増しに備えて現金比率を高めにするという事は
一見賢く儲かりそうな方法に見えますが
実際はしばらく必要のないお金まで市場から遠ざけるという
非合理的な手法になってしまう訳です
では現金比率を決めることが推奨できないのであればどうすればいいのか?
私は現金比率ではなく現金額を決めるべきだと考えています
要は投資金額との割合ではなく100万円なり500万円なり
貯金の絶対額を決めてそこからはみ出した分は投資に注ぎ込むという至極単純な方法です
この手法の利点は
総資産のうち設定した金額を除いた最大額を常に投資し続けられることです
前述した通り資産運用を長く続けると
高確率で現金より投資分の方が早く増えていくため
どうしても現金比率は変わってしまいまうためバランスは崩れていきます
しかし生活防衛資金というのは本来
相対的な割合ではなく生活費の何か月分など絶対的な金額で出せるはずです
もちろんこの金額は必ずしもずっと一定である必要はなく
結婚や子供の進学などライフプランに合わせて少しずつ変えていっても問題ありません
また、最大額を投資すると言っても生活に必要なお金以外すべてリスクにさらすわけではなく
リスク許容度が低い人はそもそもの現金額を多めに設定したり
国債などの無リスク資産を活用することもできます
大事なのはあやふやな基準による割合を守るために
必要以上のリスクを取ったり逆に資産形成を鈍化させるのではなく
本当に必要なお金を死守したうえで効率的な資産運用をすることです
最初にも言った通り資産形成を始めたての時点で
一つの目安として割合を決めるのは非常に分かりやすくオススメです
ただ資産形成が順調であればあるほど
その現金比率を守るのは難しくなっていきます
リスクとリターンのバランスを取るために使っていた基準を守るために
いつのまにかリスクとリターンのバランス自体が壊れていては元も子もありません
ある程度資産形成に慣れてきたら、現金比率という補助輪を外して
各々本当に必要な金額はいくらかというのも考えてみてください
それではまた
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