夢と現実を行き来する設定を聞いたときは
めちゃくちゃワクワクして期待していたものの、、、
「インセプション」は簡単に内容を説明すると夢の中に入り込む技術を持った主人公たちが
VIPの潜在意識に潜り込んで産業スパイとして情報を抜き取るSFサスペンスです
夢の中ならではの特殊なアクションシーンや
入れ子構造になった夢の中の夢というアイデアなど
ワクワクする仕掛けが非常に多い作品でした
そういった仕掛けの巧妙さや衝撃的なラストについては
見ると感想を誰かに話したくなるような印象です
ただ正直そういったこの映画独自の魅力とは別に
根本的な構成の部分などで引っかかってしまい
視聴した後不完全燃焼のもやもやとした気持ちになってしまったのも事実です
気になった点は大きく分けて三つ
・作品内の夢の扱いがあいまい
・現実部分の雑さ
・そもそもの動機の薄さ
これらの理由について細かくお話していきます
作品内の夢の扱いがあいまい
まず初めに気になったのが夢に対する作中での扱いがよく分からないという点です
作中では夢の中に入るという行為は主人公だけの特殊能力ではなく
ある程度確立した技術的な描写がされています
一般人にも広く常識のように知られているわけではなさそうですが
少なくともターゲットが夢で情報を守る方法を知っていたりすることから考えて
ある程度の立場のある人間が対策する程度には一般化された知識なのでしょう
しかしその割に昔の主人公たちが夢の世界と現実の時間の流れが異なることを知らなかったり
強い鎮静剤を使うデメリットをプロである仲間たちが知らなかったりと
未知の能力なのか既知の技術なのか境目があいまいで終始気になってしまいました
現実部分の雑さ
次に気になったのは現実部分の展開がかなり適当になっている点でした
もちろん夢の世界が主軸となっているため
現実はある種おまけでしかないのかもしれません
しかし最高のメンバーを集める際に
わざわざ他国に飛んでまで夢についての知識も他の突出したスキルもない大学生を加入させた理由は
最期までよく分かりませんでした
他にも夢に入る前提条件として
ターゲットを怪しまれることなく十時間眠らせる必要があるという話になり
何か巧妙な作戦があるのかと思いきや
めちゃくちゃ力技で解決してしまい山場ですらありませんでした
こういった細部の雑さが全体の印象に悪影響を与えていると感じてしまいます
そもそもの動機の薄さ
私が話に入り込めなかった最大の理由はストーリーの大元でありタイトルにもなっている
インセプション(アイデアの植えつけ)を行う動機の薄さでした
主人公のコブは夢の中でアイデアを盗むのではなく
逆に相手の潜在意識に都合のいいアイデアを植え付ける「インセプション」を依頼されます
これは技術的に非常に難しいだけでなく
ただ相手が持っている情報を盗むことと違って
相手の人生の全てに影響を与えかねないとしてコブは難色を示します
産業スパイでも十分人生に影響を与えるとは思いますが
どうやら人格などにも影響があるということなのか
よほどの理由でなければやりたくないという意思を表明します
これに対して依頼人が理由を話しますがその理由というのが
このままだとエネルギー業界のシェアを半分握られてしまう
というものでした
確かに企業間や国際的に見るとそこそこでかい問題ではありますが
そのターゲットが作中で悪い事を企んでいるという情報も特になく
少なくとも出ている情報だけで言うなら単なる大企業の二代目です
少なくとも主人公視点でなにか心変わりするほどの強い理由になるとは到底思えません
報酬として長い間会えていない家族との再会を提示されてはいるものの
時系列的に報酬提示後にインセプションに反対しているため
本当にここの心変わりの意味が分かりません
ストーリーが進むにつれ主人公がインセプションという行為に
非常に強いトラウマがあることが徐々に明かされるのですが
そのトラウマが、よりこの時の決断の一貫性のなさを強調するようでした
その他の構成要素がいかに素晴らしくても
自分の過去の失敗の尻ぬぐいのために人の人生を歪めている
という印象を持ってしまい主人公の行動すべてに納得できませんでした
よく創作論として
主人公は一貫した目的と行動がないといけない
といった内容を見かけることがありますが
今作の主人公コブはまさにこの真逆という印象です
もちろん家族に会いたい気持ちや過去のトラウマは十分わかります
でもだからこそそのトラウマが大きければ大きいほど
今回の依頼を受ける際に心変わりした理由が薄すぎて
共感できない気持ちになってしまいました
総括すると夢の中を行ったり来たりする設定は面白いですし
人によっては刺さりまくる内容だと思いますが
個人的にはあまりお勧めできないという結論です
正直もやもやがすごいので近いうちに別の映画を見て気分転換をしようと思います
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