十代女子の考えなしの無鉄砲さが癖になる映画【Never Goin’ Back】レビュー

オススメレビュー

将来を一切気にせず全力で今を楽しむ姿が妙に羨ましくなる名作

今回見た映画は「Never Goin’ Back」という映画
底抜けに明るい女子高生同士のカップルがビーチへの旅行を計画するところから話は始まります

これだけ聞くと爽やかな青春物のようですが全く違います
この二人はいわゆる不良少女ですが日本人が想像するレベルの不良ではありません
飲酒、大麻、覚せい剤とやりたい放題な上に口は悪く、初っ端から下ネタ全開
基本的に考えなしの刹那主義です

そもそも物語の大元であるビーチへの旅行も
来週支払い予定の家賃を使って予約するほどの無鉄砲さです

当然そんな生活を送っているのでトラブルにならない訳もなく
様々な問題にぶち当たりますがそのたびに彼女たちなりの方法で乗り越え続けます

その方法というのが正直大人の私には、というより大半の日本人にとっては
明らかに無茶で無謀なやり方ですがそれでも後ろを振り返らずに進み続ける姿に
気が付くといつの間にか引き込まれているような映画でした

この映画の三つの魅力

・絶望的な環境と底抜けの明るさ
・若さからくる無謀
勢い
・店長の優しさ

絶望的な環境と底抜けの明るさ

彼女たちは前述のとおり不良少女ですが
そもそも住んでいる環境もめちゃくちゃ劣悪です

兄とその友人はドラッグの売人崩れですし
自分たち含め周りでは違法薬物が当たり前のように使われています

家庭環境も悪く今は実家を出ているものの
祖父母との仲は悪く両親はおそらくいないためバイトで生活費を稼いでいる状況です

普通ならそういった環境や格差社会を問題視したり
そんな中でも必死に生きる少女たちの姿を取り上げそうなものですがこの映画は違います

あくまでそういった劣悪な環境は彼女たちの日常風景として描かれていて
彼女たちもその状況を当たり前のものとして受け入れています

でもそんな環境を悲観するどころか特別視することもなく
ただただ等身大の十代女子として今を目一杯楽しんでいるおかげで
絶望的な環境にもかかわらず作品を通してコミカルな明るさに包まれています

若さからくる無謀な勢い

そんな明るい彼女たちですが考えなしなので当然のように何度も問題にぶつかります

金欠、逮捕、クビ、etc…

そもそも無計画で短期的な思考しかないので
一か月以上先の将来なんて全く意識の片隅にもありません

金がないから狂言強盗を企てたり
店の商品を当然のようにつまみ食いして注意されると逆切れしたりと無茶苦茶で
こんな生き方をしたいかと言われると確実にNOと言います

そんな犯罪行為はもちろん論外ですが
なぜか彼女たちの根本にある無茶で無謀で勢い任せな生き方は
賢ぶって先の事ばかり考えている自分にはない魅力を感じずにはいられませんでした

若さと言ってしまえばそこまでですが
彼女たちのような衝動的で刹那的な生き方は大人になった今
めちゃくちゃ自分から遠く光って見えました

大人になってからどころか自分が彼女たちと同じ高校生だった頃すら
もう少し先の事や物事の結果を考えていたと思いますし
彼女たちの生き方はいつか痛い目を見るどころか作中でも
現在進行形で痛い目に会い続けます

どう考えても上手くいくわけがない無茶な生き方を続けるため
視聴中に私は何度もリアルに頭を抱えました

でもだからこそ
失敗をすぐさま忘れてまた衝動に任せて次の失敗へ向かっていく無謀さ
不思議と目を離せないような魅力を感じました

店長の優しさ

本人たちを含めて周りにもロクな人間がいない今作ですが
バイト先の店長だけは違います

店長の出番は非常に少なく二回だけですが
唯一のまともな大人として登場する彼は非常に印象的でした

酒を飲んで出勤したり、遅刻の常習犯である二人を辛抱強く雇い続けるだけでなく
本心から彼女たちの事を心配してくれます

二人が無断欠勤の上に大麻でハイになって出勤してきた際
ついにかばいきれなくなってクビを言い渡しますが
そこでも彼は激昂したりしませんでした

勤務態度が最悪な彼女たちですが
その底抜けの明るさが彼にとっての救いだったといい
最後のお願いとして

「私のようになるな人生を楽しめ」

という助言をします

普通ブチ切れてもおかしくない場面で
優しく許すどころか彼女らの生き方を肯定する店長が
そこまで映画を見た自分の気持ちと重なると共に
度量の深さと無謀さをなくしてしまった物悲しさもあってグッときます

最初にも書いた通り、彼女たちの日常はあまりにも荒れ切っているうえに
彼女たち自身も決して善良ではなく正直言って相当馬鹿な女子高生です

おそらく日本人の大半は彼女たちの言動に眉を顰めることはあっても
全面的に共感することは出来ないと思います

でも彼女たちのような生活は絶対送りたくない一方で
そんな薬物や犯罪塗れの無茶苦茶な生き方の中に
自分にはない【今】を楽しむ姿見つけたとき
彼女たちの刹那的な生き方に少し憧れている自分に気が付かされるような映画でした

ほんとにやりたい放題過ぎてこの映画が苦手な人も多いかもしれませんし
自分の周りにこんな女子高生がいたらムカついてしょうがないと思いますが
映画としては個人的に滅茶苦茶好きな作品でした

一時間半程度の比較的短い作品ですので気になった方はぜひ見てみてください


コメント

タイトルとURLをコピーしました